要約
幕末の動乱期、越前藩主・松平春嶽は徳川幕府の改革に尽力し、将軍就任を迷う徳川慶喜を支え続けました。しかし、慶喜が将軍の地位についた後、春嶽の意見は次第に無視され、幕政から遠ざけられます。春嶽は慶喜に「裏切られた」と感じ、深く失望したと記録されています。この記事では、その背景と二人の関係の変化を詳しく追いかけます。
ミホとケンの対話

ねえケン、『松平春嶽』って聞いたことある?

うーん…名前はなんとなく。でも武将?

うん、でも戦国じゃなくて幕末の人。越前福井藩の藩主だよ

あっ、幕末か!じゃあ、坂本龍馬とかの時代?

そうそう!春嶽は幕府の改革派で、政治力があった人なの

なんか頭良さそうなイメージあるなぁ

まさにその通り。特に、徳川慶喜を将軍に推した立役者でもあるんだよ

えっ!じゃあ慶喜の味方だったんだ?

最初はね。でも、のちに『裏切られた』って嘆くことになるの

えー!なんで!?どうして仲悪くなっちゃったの?

春嶽は開国派で、将軍中心の改革を目指してたの。でも慶喜は将軍になってから、春嶽の意見を無視し始めたのよ

えっ、それって冷たくない?

うん、春嶽も『私は傀儡だったのか』って愚痴ってる記録があるの

まさかの裏切り展開…ショックだなあ

しかも慶喜は最終的に大政奉還して、幕府を返上しちゃうのよ

えっ!?じゃあ春嶽が頑張って支えたのに…

そう、理想と現実の違いを痛感したんだと思う

春嶽、報われなさすぎじゃん…

でも、春嶽の政治理念は後の明治政府にも引き継がれたのよ

そうなんだ!ちょっと救われたかも
さらに詳しく

福井藩主時代の松平春嶽
松平春嶽とは?
松平春嶽(まつだいら しゅんがく/本名:慶永)は、越前福井藩の藩主であり、幕末の政治的キーパーソンの一人です。彼は徳川家の一門である「御三卿」の中でも、開明派の指導者として知られ、西洋の政治制度や軍制を積極的に学び取り入れようとしました。
特に春嶽は「公武合体」という朝廷と幕府の融和を目指す立場を取り、国内の安定を図るために開国派としての立場を鮮明にしていました。
徳川慶喜を推した理由
春嶽は、14代将軍・徳川家茂の後継に徳川慶喜を推挙しました。当時、慶喜は将軍職を固辞していましたが、その政治的手腕と知識、行動力を高く評価していたのです。
春嶽は「今の幕府には慶喜のような人物が必要だ」と語り、幕府の改革を託せる存在と信じていました。将軍職就任への後押しは、まさに春嶽の信頼の証だったのです。
関係の悪化と「裏切り」
政治からの排除
ところが将軍となった慶喜は、次第に春嶽の意見を軽視し始めます。特に「政事総裁職」としての立場を持っていた春嶽は、慶喜の意志決定から除外されていき、形式的な役職に留まることを余儀なくされました。
この変化に、春嶽は深く失望し、「私は飾りに過ぎなかった」と記録に残すほどです。これは彼にとって、政治的な裏切りであり、個人的な信頼の崩壊でもありました。
大政奉還の衝撃
1867年、慶喜は大政奉還を断行します。これは朝廷に政権を返上するという一大決断でしたが、春嶽には事前に相談がなかったと言われています。
春嶽は、幕府体制を維持しつつの改革を目指していたため、この決断には深い衝撃を受けたとされています。しかも慶喜はその後の政治責任から身を引き、春嶽らを混乱の中に取り残したのです。
史料に基づく見解
松平春嶽自身が後年に記した『逸事史補』や『続再夢紀事』などの回顧録では、大政奉還の件について自分は関与できなかったことへの不満や困惑が読み取れます。
彼は政治参与や政事総裁職という高い地位にありながら、慶喜が独断で決断し、自分たち改革派には相談がなかったことを強く嘆いています。
なぜ慶喜は裏切ったのか?

征夷大将軍在任時の徳川慶喜
慶喜の行動は、果たして裏切りだったのでしょうか?彼には、外国勢力の圧力や、倒幕の動きへの対処など、幕府を維持すること自体が困難という現実がありました。
春嶽が理想主義的であったのに対し、慶喜は現実主義者だったとも言えます。つまり、信頼関係の破綻は、時代の急激な変化に対応する上での考え方のズレから生まれたものでもあるのです。
春嶽の理念は明治へと継承された
失意の春嶽でしたが、その後も新政府に参与し、版籍奉還や廃藩置県などの改革に影響を与えました。彼の持っていた近代国家のビジョンは、明治維新の土台となったのです。
つまり、慶喜に裏切られたとしても、春嶽の改革精神は時代を越えて生き続けたといえるでしょう。
まとめ
松平春嶽は、幕末の政治改革に尽力した名君として知られています。彼は徳川慶喜に大きな期待をかけて将軍に推しましたが、やがて無視され、裏切られたと感じるようになります。その背景には、理想と現実のギャップや、時代の急激な変化がありました。春嶽の思いと行動は、今なお多くの示唆を与えてくれます。
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