要約
長篠の戦いは、織田信長と徳川家康の連合軍が武田勝頼を破った戦として有名で、「鉄砲三千挺による三段撃ち」が戦局を決めたとされています。しかし、近年の研究ではその通説に疑問が投げかけられています。本記事では、長篠の戦いの実像や「鉄砲三千挺は本当だったのか?」という疑問についてわかりやすく掘り下げていきます。
ミホとケンの対話

ねえケン、『長篠の戦い』って聞いたことある?

あー、なんか信長が鉄砲でドカーンって勝ったやつだよね!

ふふ、だいたい合ってるけど…その『鉄砲でドカーン』ってとこ、実はちょっと怪しいの

えっ!?ウソなの?鉄砲三千挺とか、三段撃ちってやつでしょ?

よく知ってるね。でもそれ、江戸時代に作られた脚色が混じってる可能性があるの

えー!教科書に書いてあったのに?!

信長が鉄砲を使ったのは確かだけど、三段撃ちが行われたという記録は一次資料にはないのよ

じゃあ、鉄砲三千挺もウソなの?

完全なウソではないけど、3000挺すべてを一斉に撃ったわけではないの

そ、そんなぁ…夢が崩れる…

でも、戦術として鉄砲をうまく使ってたのは事実!たとえば柵を作って鉄砲隊を守ったりね

あ、柵って馬を止めるやつ?

そう!武田の騎馬隊の突撃を防ぐための工夫だったのよ

なるほど~、ちゃんと準備してたんだ!

あと、信長は連携も上手で、徳川家康と一緒に挟み撃ちの形で攻めたの

あ、家康もいたの!?信長ばっか目立ってるけど!

そうそう、実は家康の支援も大きかったの。でも主役はやっぱり信長かな

じゃあ、三段撃ちは?なかったの?

三段撃ちって、江戸時代の軍学書にしか出てこないの。たぶん、後から美化されたんだと思う

えー、じゃあ誰がそんな話作ったの?

軍学者や講談師とかが、信長を“すごい戦術家”として描きたかったんじゃないかな

歴史って、けっこう盛ってるのね…
さらに詳しく

長篠合戦図屏風(徳川美術館蔵)
長篠の戦いとは何か?
1575年(天正3年)、織田信長と徳川家康の連合軍が、武田勝頼の軍勢と激突したのが長篠の戦いです。戦場となったのは、現在の愛知県新城市に位置する長篠城周辺です。
連合軍の兵力は約38,000人、対する武田軍は約15,000人とされています。戦いの背景には、織田・徳川連合軍による勢力拡大と、それに対抗する武田家の危機感がありました。武田軍は、包囲中の長篠城を落とすべく動きますが、そこに織田・徳川軍が迎え撃つ形で展開します。
鉄砲三千挺と三段撃ちの伝説
長篠の戦いを語る際に必ず登場するのが、「鉄砲三千挺」と「三段撃ち」の逸話です。これは、織田信長が3,000挺の火縄銃を用い、3列に並んだ鉄砲隊が交代で撃つという革新的戦術で、武田の騎馬隊を打ち破ったというものです。
しかし、この話には問題があります。信長の家臣・太田牛一による一次史料『信長公記』には、三段撃ちや3,000挺を同時に使用したという記述はありません。この戦術が登場するのは、江戸時代の軍学書や講談であり、後世の創作である可能性が高いのです。
実際の戦術はどうだったのか?
信長が鉄砲を大量に導入し、うまく使ったのは事実です。しかしそれは「連射戦術」ではなく、馬防柵(ばぼうさく)と呼ばれる防御施設を利用した、防御重視の戦術でした。
馬防柵の設置
信長は、戦場に3重の木製柵を築き、そこに鉄砲隊を配置しました。これにより、武田の騎馬隊による突撃を防ぎつつ、敵が近づく前に火縄銃で撃つことが可能になったのです。
射撃の工夫
火縄銃は再装填に時間がかかるため、三段撃ちのような連続射撃は難しかったと考えられています。代わりに、分隊単位での交互射撃や、指揮官による射撃のタイミング調整が行われた可能性が高いです。
なぜ三段撃ち伝説が生まれたのか?
三段撃ちが広まった背景には、江戸時代の軍学や講談の影響があります。講談師たちは、戦国武将を英雄として語ることが人気で、信長を「鉄砲戦術の天才」として演出するために、ドラマチックな戦術を創作したと考えられています。
また、江戸時代の軍学者たちも、信長の戦術を後世の兵法に応用するため、理論化して紹介する中で、実際の戦術よりも合理化・美化した形にしていきました。
信長の評価は変わるのか?
鉄砲三千挺や三段撃ちが事実でないとしても、信長の革新性は揺らぎません。彼は火器の有効性を早期に理解し、それを戦略的に使いこなした最初の武将の一人です。また、同盟関係を巧みに利用した戦術展開や、兵站・補給の確保など、総合的な戦術能力の高さも特筆されます。
つまり、「伝説」がなくても、信長は十分にすごいのです。
まとめ
長篠の戦いで織田信長が鉄砲を効果的に用いたのは確かですが、鉄砲三千挺による三段撃ちというのは後世の創作である可能性が高いとされています。信長の戦術的な工夫や実際の戦場の様子を知ることで、より現実に即した歴史像を描くことができます。
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